2007'07.01.Sun
マルレーネ・デュマス -ブロークン・ホワイト
於・東京都現代美術館(会期 4/14~7/1)
観覧時間の目安:1時間半(但し、ドキュメント映像を見る場合+1時間)
今日で会期が終わってしまう展覧会の感想を書くのもなんですが、
友人に「是非見るべき」と薦められて急遽出かけてきました。
結論から言うと、見てきて良かった!!
現代美術の知識はまるでないんですが、
これからはまめにチェックしようと気持ちを新たにしました。
会場を訪れるまでマルレーネ・デュマス氏に関する情報は
一切持っていませんでした。
そんな貧しい知識から簡単に紹介しますと、
1953年に南アフリカで生まれた女性画家で、
現在アムステルダムを拠点に活動を行っている、
近年特に注目されているアーティストです。
また、様々な形態のアーティストとコラボレーションを行っており
今回の美術展のタイトルは、「アラーキー」こと
荒木経惟氏の写真を元に描いた新作の題名です。
彼女の作品の特徴は、とにかく人物。
それ以外のモチーフはめったにありません。
また、作品ごとの展示ではなく、何枚ものシリーズとして
まとめて展示することにこだわりを持っているように感じられました。
これは美術館側の意図ではなく、本人自らがそう希望しているようです。
この展示でびっくりしたのが、フロアーがとにかく広いこと。
たいていの展覧会では、フロアーをいくつかのブースに区切って
年代ごと、シリーズごとに展示するのが主流なんですが、
デュマスの作品はだだっ広い空間に、ぽつり、ぽつりと、
あるいは、小さな作品を何十枚にも整然と並べてあるのです。
この日、たまたま展覧会の担当学芸員による講演会があるということで、
1時間ほど作品を鑑賞したあと、キュレータートークを聴講しました。
この話を聞いた前と後では、彼女の作品の見方がずいぶん変わったのですが、
まずはじめに感じた印象を書きます。
とにかく、色彩の感覚がすごい、見たことない! と思いました。
彼女の作品は特に顔だけを描いたものが多いのですが、
肌に極彩色を塗ったり、目鼻口の周りだけ真っ黒だったり、
不思議な顔が多いのです。
上にアップした画像は、彼女の自画像なのですが、
これも手と右頬だけ黒く、大変惹きつけられる作品でした。
また、モノクロームの作品群も多いのですが、
墨や絵の具をたっぷりの水でにじませた、偶然性の高いもの。
この人「自由な画家だ」という印象を深く受けました。
その後講義を聴くことになるのですが、彼女が枠にはまらない自由な意味を、
見るものに深く訴える作品を描くことの意味を、少しだけ分かった気がします。
それは、彼女が南アフリカに生まれた白人という特殊な環境に育ったこと。
アパルトヘイトで有名な人種差別の国ですが、彼女は裕福な農家で生まれました。
大学はケープタウンの総合大学の美術科で学んだそうですが、
そこでの教育は、ヨーロッパのものとは違い、
デッサンや美術史は一切学ばなかったそうです。
それが原因なのか、彼女の初期の作品はコラージュのものが多いです。
23歳オランダに渡った彼女は自由を感じ、
初めて南アフリカの異常な世界に気づきます。
そして、黒人男性の顔を描いたシリーズ
《ブラック・ドローイング》を発表しますが、
当時ヨーロッパでは、その作品は
南アフリカで生まれ育った「彼女」自身の問題であり
自分たちとは関係のない世界だと捉えられショックを受けたと語っているそうです。
その後、同じ形式の《女》という作品を発表。
こちらは様々な人種、年代の女性のポートレート、
100展以上から構成されます。
黒人も女性もアートの世界ではマイノリティであるということを
訴えたかったのではないか、学芸員の方はそう話していました。
最近では、イスラム系の男性を描いた油彩のシリーズを描いています。
特にオランダでテロ事件の犯人として捕らえられた男性をモチーフにした作品は
見るものにすさまじいインパクトを与えたそうです。
異なる人種、異なる立場、個々の人間の生き様を描く画家。
「いま私たちの怒りや悲しみ、死や愛といった感情をリアルに
表現してくれるのは写真や映画になってしまった。かつては絵画が
担っていたそのテーマをもういちど絵画の中に取り戻したい」
そう彼女は語っているそうです。(展覧会パンフレットより引用)
巡回展として、10月21日より丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催されるそうです。
お近くにお住まいの方は、ぜひどうぞ。おススメです!!
一切持っていませんでした。
そんな貧しい知識から簡単に紹介しますと、
1953年に南アフリカで生まれた女性画家で、
現在アムステルダムを拠点に活動を行っている、
近年特に注目されているアーティストです。
また、様々な形態のアーティストとコラボレーションを行っており
今回の美術展のタイトルは、「アラーキー」こと
荒木経惟氏の写真を元に描いた新作の題名です。
彼女の作品の特徴は、とにかく人物。
それ以外のモチーフはめったにありません。
また、作品ごとの展示ではなく、何枚ものシリーズとして
まとめて展示することにこだわりを持っているように感じられました。
これは美術館側の意図ではなく、本人自らがそう希望しているようです。
この展示でびっくりしたのが、フロアーがとにかく広いこと。
たいていの展覧会では、フロアーをいくつかのブースに区切って
年代ごと、シリーズごとに展示するのが主流なんですが、
デュマスの作品はだだっ広い空間に、ぽつり、ぽつりと、
あるいは、小さな作品を何十枚にも整然と並べてあるのです。
この日、たまたま展覧会の担当学芸員による講演会があるということで、
1時間ほど作品を鑑賞したあと、キュレータートークを聴講しました。
この話を聞いた前と後では、彼女の作品の見方がずいぶん変わったのですが、
まずはじめに感じた印象を書きます。
とにかく、色彩の感覚がすごい、見たことない! と思いました。
彼女の作品は特に顔だけを描いたものが多いのですが、
肌に極彩色を塗ったり、目鼻口の周りだけ真っ黒だったり、
不思議な顔が多いのです。
上にアップした画像は、彼女の自画像なのですが、
これも手と右頬だけ黒く、大変惹きつけられる作品でした。
また、モノクロームの作品群も多いのですが、
墨や絵の具をたっぷりの水でにじませた、偶然性の高いもの。
この人「自由な画家だ」という印象を深く受けました。
その後講義を聴くことになるのですが、彼女が枠にはまらない自由な意味を、
見るものに深く訴える作品を描くことの意味を、少しだけ分かった気がします。
それは、彼女が南アフリカに生まれた白人という特殊な環境に育ったこと。
アパルトヘイトで有名な人種差別の国ですが、彼女は裕福な農家で生まれました。
大学はケープタウンの総合大学の美術科で学んだそうですが、
そこでの教育は、ヨーロッパのものとは違い、
デッサンや美術史は一切学ばなかったそうです。
それが原因なのか、彼女の初期の作品はコラージュのものが多いです。
23歳オランダに渡った彼女は自由を感じ、
初めて南アフリカの異常な世界に気づきます。
そして、黒人男性の顔を描いたシリーズ
《ブラック・ドローイング》を発表しますが、
当時ヨーロッパでは、その作品は
南アフリカで生まれ育った「彼女」自身の問題であり
自分たちとは関係のない世界だと捉えられショックを受けたと語っているそうです。
その後、同じ形式の《女》という作品を発表。
こちらは様々な人種、年代の女性のポートレート、
100展以上から構成されます。
黒人も女性もアートの世界ではマイノリティであるということを
訴えたかったのではないか、学芸員の方はそう話していました。
最近では、イスラム系の男性を描いた油彩のシリーズを描いています。
特にオランダでテロ事件の犯人として捕らえられた男性をモチーフにした作品は
見るものにすさまじいインパクトを与えたそうです。
異なる人種、異なる立場、個々の人間の生き様を描く画家。
「いま私たちの怒りや悲しみ、死や愛といった感情をリアルに
表現してくれるのは写真や映画になってしまった。かつては絵画が
担っていたそのテーマをもういちど絵画の中に取り戻したい」
そう彼女は語っているそうです。(展覧会パンフレットより引用)
巡回展として、10月21日より丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催されるそうです。
お近くにお住まいの方は、ぜひどうぞ。おススメです!!
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見逃しました
久しぶりに遊びに来たところ、美展の感想が!読んでいるうちにすっかり行きたくなったのに、終わってしまったんですね。。せっかく近所でやっていたのに、残念。(^^;
現代美術は簡単に理解できないものが多くて、ついパスしがちですが、バックグラウンドなどを知ると意図が分かりやすいですね。キュレーター・トークにも一度チャレンジしてみたいです。
臨場感があって、見たつもりになれる感想をありがとうございました!
それではまた~。
現代美術は簡単に理解できないものが多くて、ついパスしがちですが、バックグラウンドなどを知ると意図が分かりやすいですね。キュレーター・トークにも一度チャレンジしてみたいです。
臨場感があって、見たつもりになれる感想をありがとうございました!
それではまた~。
お勧めなんですがっ!
>ろめいんさん
お返事が遅くなってしまって、本当に申し訳ないです!
私も現代美術にはあまりなじめないと思っていたのですが、最近積極的にいろんな展覧会に行くようになって、だんだん良さが分かってきた気がします。と書くとえらそうなんですが、やっぱり今を生きる人間にとって身近に感じるんじゃないかなと。
古いものは、単に美しいとか、綺麗とか、好きとか、表面的なところで判断してしまうんですけど、現代美術は背景が分かるので、その絵画の奥底に眠る「何か」を空気で感じられる気がするんですよ。
そんなこんなで、この「デュマス展」は私の魂を大いに揺すぶるものでした。もっと早く見てたら、たくさんの人にお勧めしたかったんですけど、遅かったです。無念・・・。
しかし、まだまだ美術を語るには圧倒的に見てる数が足りないですね。古いものも、新しいものも、えり好みせずたくさん見ていきたいと思ってます。
お返事が遅くなってしまって、本当に申し訳ないです!
私も現代美術にはあまりなじめないと思っていたのですが、最近積極的にいろんな展覧会に行くようになって、だんだん良さが分かってきた気がします。と書くとえらそうなんですが、やっぱり今を生きる人間にとって身近に感じるんじゃないかなと。
古いものは、単に美しいとか、綺麗とか、好きとか、表面的なところで判断してしまうんですけど、現代美術は背景が分かるので、その絵画の奥底に眠る「何か」を空気で感じられる気がするんですよ。
そんなこんなで、この「デュマス展」は私の魂を大いに揺すぶるものでした。もっと早く見てたら、たくさんの人にお勧めしたかったんですけど、遅かったです。無念・・・。
しかし、まだまだ美術を語るには圧倒的に見てる数が足りないですね。古いものも、新しいものも、えり好みせずたくさん見ていきたいと思ってます。
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